ヤクとアヒル

日常の問題を解決したときにつけるログ

奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)を受験した際の小論文を公開します

合格した際に公開すると言っていたので,以下のリンクに小論文(研究計画書)を公開しておきます.
作成に使用したソフトはLaTeXです.希望があったためにソースも公開しました.ただし,プリアンブルに使っていないパッケージも入っているため適当に取捨して下さい.また,パッと見の違和感はないようにレイアウトを組んでいるつもりですが,アラはあります.ご了承下さい.

注意:文字コードEUC-JPです.近年のスタンダードであるUTF-8ではありません.

提出者の概要

  • 受験時期:平成25年度入学試験(一回目)
  • 受験した研究科:情報科学研究科
  • 希望した講座(研究室):ロボティクス
  • 学部での専攻:ロボティクス
  • 受験時のTOEIC点数:590点(英語の試験はTOEICで代替しました)
  • 学部での席次:上位20%以内

注意

これをそのまま出しても落ちます.受験生はそれぞれ入りたいという目的もバックグラウンドも全く異なりますから,参考になるのは構成だけだと思います.

小論文のつくりかた

小論文の書き方の本などは一切読んでいません.ただし,木下:『理科系の作文技術』などの文章作成術の本は好きでちょいちょい読んでいました.余談ですが,今度結城浩さんの新刊『数学文章作法 基礎編』が出版されるので楽しみ.

小論文を書く前に━研究テーマの決定

内容を考えるところから以下の様な手順で作成しました.
手順1~3は受験する大学院を決める前に行うことです.

1. 何が研究したいのかを考える

→目的をつくる
私はいろいろやりたい事があり,絞り込みに苦労しました.
詳しいことは(語りすぎるので)割愛しますが,ニコ動を見ていると可愛いCGモデルをつかった動画が沢山あると思います.CGモデルに触れてみたいと思ったことが直接のきっかけとなり触覚の再現に関するテーマが面白そうだと決まりました.

2. 研究したいテーマが漠然と決まったら,その分野について調べる*1

→目的を支持する背景とその技術の問題点を知る
触覚に関する研究がしたい(CGにさわりたい)ということが決まったので,次にそのような研究が既になされているのかを調べます.関連書籍があれば,まずそれを読みますが,書籍が手に入らないことも多いでしょう.また,書籍が手に入ったとしても最先端の問題までフォローしていないことが多いでしょう*2しかし,私達は小論文を書くために,最先端でやられていることを知っておく必要があります.どうすればよいでしょうか.
最先端の先行研究を手っ取り早く知る方法は,自分がやりたい研究に近しい研究の論文を読みあさることです.論文にはその研究の先行研究(関連研究,Related works)が必ず緒言(Introduction)に紹介されています.
論文の探し方についてはここでは詳しく触れませんが*3大学図書館のHPなどによく書いてあります(例:京都大学図書館機構 - レファレンスガイド).
気軽に検索できるサイトとしては以下のサイトがあります.サイトによっても分野の得意・不得意があるようです.そこは各自検索して下さい.

参考リンク:
自宅でできるやり方で論文をさがす・あつめる・手に入れる 読書猿Classic: between / beyond readers

先行研究を調べると以下の点がわかってきます.

  • その分野で問題になっていること
    • どこまで達成できていて,どこからできないのか
  • その分野において成果をあげている研究室

もし自分の行いたいことが完全にやられていたら手順1に戻りますが,殆どの場合完全にやられているということはないと思います.
しかし,論文を読むことで基礎知識も手に入るため,それに影響されてこの時点で研究目的が変わることも十分ありえます.

3. 研究したいテーマを具体化する

手順2で,分野の問題点がわかってきました.この時点でやりたい研究を具体化します.問題を解決するためにどんなアプローチをとろうか想像します.例えば以下のように問題を分割します.

  • 目的をはっきりさせます(大目標)
  • 研究を達成する要件は何か(中目標━勝利条件)
  • 目標達成に重要なことは何か(小目標━勝利条件を達成する要素)

そして,修士2年間でできると踏んでテーマを設定します.しかしおそらくこの勘ははずれます.1年後ぐらいに「あれこれ無理じゃね」とか思い始めるのではないかと.この道のプロではないのだから,描く青地図が文字通り青いのは仕方ないです.
重要なことは,「これはできる」と自分が納得できるようなものをつくることです.そう思えるものを作るために,様々な理論的根拠や傍証(事例)を探し,それに立脚して主張することになるでしょう.それがやらなければいけないことです.

4. 研究室を決定する

手順2で,好きな分野に強い研究室がだいたいわかってくるので,その中でも自分がやりたいテーマに近いことを扱っている研究室に決定します.

5. 小論文を書く

1~3でやったことをまとめる.

6. 小論文を推敲する

友達に見せる,教授に見せる,寝て起きて忘れた頃に読んでみるなどします.

小論文を書こう━執筆時の注意点

以下の三点に特に気を使い執筆しました.

  • なにが研究したいのか,その理由は何か
  • 目標を達成するためにどのように研究していけばよいのか?
  • なぜNAISTなのか?(参考:小町さんの小論文コメント
陥りがちなミス

具体性も試みた痕跡もなしに「こんなことやりたい」という漠然としたものを提案しがちです.
こうなる原因は,小論文を書く際には右も左も研究の作法も全くわからないことにあります.たしかにツライ状況です.私も書ける気配がしませんでした.
しかし,これでは研究計画になっていません.これは問題です.次のように心がけるとよいでしょう.

対処法

教授の視点を想像して書きました.換言すれば,「この受験生は(他の受験生よりも)良い研究ができるか?」という視点で見られることを意識しました.
また,話は根拠に基づいてなるべく具体的に行うことを心がけました.ここで手順2がものを言います.研究分野に対して,どれだけ具体的に解決策などがイメージできているのかがポイントです.

参考リンク

小論文執筆については,参考[1]で以前にも少し書いています.
また,参考[2]がよくまとまっていて参考になりそうです.

  1. 奈良先端科学技術大学院大学を受けてきた - ヤクとアヒル
  2. http://sdlab.naist.jp/members/kyohei-f/entrance_exam.html

研究計画に盛り込むべき内容

「研究計画」としてはおおざっぱに以下の事柄が必要です(これ以上求められることもありますが,まずこれをしっかりまとめられれば十分でしょう).

  • 研究したいテーマ
  • 研究の意義:なぜそのテーマを研究するのか.社会的要求があるのか,その研究をすると何が嬉しいのか.
  • 関連研究:同様の研究はどのようなものがあるのか.(しっかり調査できているかを見られます)
  • 自分の研究の位置づけ:関連研究で解決されていない問題なのか?自分の研究の立ち位置は関連研究の中でどこなのか.
  • 問題の解決法:どのように問題を解決するのか.
  • (予期される結果:どのような結果が得られるはずなのか.)
参考リンク

博士後期課程に進学する人なら書くかもしれない日本学術振興会特別研究員の申請書類が,典型的な研究計画書なのではないでしょうか.これを見ればどのようなものが求められているのか参考になります.ただしこのレベルを満たすものが学部四年になったばかりの人に求められているわけではありませんので,参考までに.

  1. 募集要項(PD・DC2・DC1) | 特別研究員|日本学術振興会

私の小論文の欠点

  • 誤字がある
  • 図が全くない
  • タイトルに内容に関する情報が無い
  • 進学理由に一部ネガティブな表現がある
  • 構成上の欠点もあるはず*4

誤字があるのは論外です.見直してないのかと思います.もちろん,見なおして推敲するとまた誤字も出てしまうものです.時間的余裕が無いと誤字はとれません.私は致命的な誤字「ggg」を入れたまま提出してしましましたが*5,そんなことは絶対にないようにしましょう.

また,図が全くないのは見る気が失せます.10行の言葉を1つの図で説明できるならば作図したほうが良いでしょう.
できることなら,システムの概念図ぐらいはあったほうがいいです.
私が図を載せていないのは,単にそこまで考えている時間的余裕がなかったからです.
ですから,載せる必要がない風に書いたんですが,見て分かる通り読みづらいですよね.

タイトルは募集要項に「志望する研究について」というような例があったために,それにつられています.
しかしこれでは提出するレポートに「レポート」というタイトルをつけているようなもので,内容に関する情報が皆無です.
「~に関する研究」のように,自分が行いたい研究が一目でわかるようなタイトルがよいでしょう.

NAISTの小論文は他にもいろいろな人が公開されているので調べるとよいです.

試験の内容と出来は?

前に詳しく書いた記事があるのでそちらを参照してください.
私は学部での専攻であるロボティクス専攻を受け,試験担当の先生はその研究室のボスでした.
ですから,ロボット工学の基礎知識について口頭試問があったりしました.
NAISTは多様なバックグラウンドから人材を集めているので,口頭試問はすごく多様なはずで,これといって傾向ははかれないでしょう.
当時の受験記録も参考ください.面接の雰囲気と数学の試験内容(一部)についてかきました.

motosonomoto.hatenablog.com

面接対策

3分間で説明するために,パワーポイントを作成して(本番では持ち込み不可ですが,頭に焼き付けました)ひたすら練習しました.
研究したい分野の基礎知識(私の場合はHaptic希望でしたので,触覚の知覚機構の基礎)も頭に入れておきました.

英語の勉強法(TOEIC

三年次のTOEIC IPが455点で,3年次12月ごろからTOEICを意識し始めました.
勉強した結果,4年次3月のTOEICで590点でした.
基本的には以下の記事で書いたような英語の勉強をしました.

motosonomoto.hatenablog.com

試験一ヶ月前から,とみふらさんの院試日記で知ったヒルキ本をやりました(1日1~2課ペース).このときは研究室が忙しく(卒論出し終わるまでずっと忙しい研究室でしたw),24時~翌1時ごろ帰宅して3時ごろまで英語をやっていました.かなりの確率で寝落ちしています.

変更履歴

2013年5月1日 「研究計画に盛り込むべき内容」を加筆
2013年5月7日 LaTeXソースを公開しました
2013年6月22日 「MS academic search」のリンクを追加
2016年5月22日 文字コードについての注意を追記
2021年12月10日 Google Driveの仕様変更によりファイルが見られなくなっていたため、URLを差し替えました(いまだに見てくれてる人がいるようですが役に立つのかな)

*1:ここは特に時間がかかるフェーズです.もし手順1がすんなり決まったとしても,ここはちゃんと調べなければいけないので時間がかかります.しかしこれが後々効いてくるのでウンザリするほど調べて下さい.

*2:理由:研究者(研究をメインの仕事にしている人)が研究内容を書籍にまとめる(サブの仕事をする)ためには多大なる時間がかかります.書籍が出版されるころには,研究としての最先端は,書籍執筆時の内容よりも先に進んでいることが多いです.

*3:「これだけやれば十分!」というのが私自身にもわからないためです.

*4:ですが,それを書くためには読みなおさなければいけません.そのためには心の余裕が必要です

*5:誤字についての忠告をしている文章ですらこんな誤字をしていることに気づきました(2013年9月23日)

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